レシンク・ロボティクス社が閉鎖。その理由は何か?
ショッキングなニュースである。ロドニー・ブルックス氏が共同創設したリシンク・ロボティクス社が、突然閉鎖された。『ボストン・グローブ紙』が伝えている。
同社は、コーロボットを早くから開発した先進的な会社で、何よりもアイロボット社の共同創業者であり、ロボット業界の第一人者でMITの有名教授でもあるブルックス氏が率いていた。
直接の理由は、キャッシュが足りなくなったこととされているが、その背後には競争や中国の事情もあったようだ。
同記事によると、同社の2本アームのバクスター(Baxter)と1本アームのソイヤー(Sawyer)はユーザーが期待したレベルで動作することができなかった上、同じくコーロボットを開発するユニバーサル・ロボッツ社との競争に晒されていた。ユニバーサルは、先ごろ25,000台目の販売を祝ったばかりだ。
また、『ロボット・レポート』創設者のフランク・トービ氏は同記事の中で、中国との取引が理由の一つではないかとしている。リシンクは中国からの大型注文を受けてカスタマイズを進めていたものの、中国側のディストリビューターが取引を遂行しなかったため、多くの在庫が残ってしまった。ディストリビューターが手を引いた背後には、現在米中が火花を散らしている貿易摩擦や、中国経済の成長鈍化も無関係ではないと見ている。
ロボットの業界団体である全米自動化協会(A3)のジェフ・バーンスタイン会長は、バクスターは性能上の問題があり、後発のソイヤーはユニバーサルを追っかけるのに必死なままに終わったと見る。ユニバーサルは、自社製品の周りに周辺機器開発会社のエコシステムを作り上げているが、そうしたエコシステムを作り損ねたことも一因ではないかと言う。
ユニバーサルだけではなく、最近はクカ、ファナック、ABB、安川などのロボット大手もコーロボットに進出している。それもリシンクの市場を狭めた理由という声もある。
リシンク・ロボティクス社は、自社売却を目指して最後まで交渉を続けていたようだが、それも成功しなかった。同社のスコット・エックハートCEOは、これから同社のパテントやIPを売却するが、91人の社員は行き先には困らないだろうとしている。同氏は「後に振り返れば、リシンクは産業ロボットの歴史を大きく変えた存在として記されるだろう。われわれは、ロボットが人間と一緒に仕事ができることを証明した」と語っている。
今回の閉鎖は、最初にイノベーションを起こす企業が必ずしも成功するわけではないということの証左かもしれない。だが、リシンク・ロボティクス社の存在はロボット業界全体にとって大きな力を与えてくれたことは確かだ。