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2013/05/03
このビデオの左下に映っている銀色のクォーター(25セント硬貨)は、直径23ミリほどのサイズ。この昆虫のようなロボット「ロボビー(RoboBee)」の小ささをわかっていただけるだろうか。
みつばちというよりは、極小トンボのようなこのロボビーは、ハーバード大学のワイス研究所 と工学応用科学部 (SEAS)の共同研究で実現されたもの。ワイス研究所は、正式名を「Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering」といい、生物の構造やしくみから発想を得たエンジニアリングを研究分野としている。
このロボビーは、10数年の研究の集大成とも言えるプロジェクトで、飛行中に一カ所に停止したり、左右に移動したりできる。画期的な製造方法も共に提示されている。それによると、レーザーカットされたカーボンファイバーに柔らかな素材の層を挟み、それをまるでポップアップ絵本を開くようにして立ち上げれば、微細な三次元構造体を作ることができるようだ。下のビデオで詳しく説明されている。
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羽は毎秒120回羽ばたき、目にはまるで止まっているようにすら見える。羽を動かす筋肉の部分には、電場をかけると伸縮するセラミック素材のピエゾ電気アクチュエーターが用いられた。電気は細いケーブルを通して外部から供給されている。バランスを保つために、現位置と目的位置の差をリアルタイムで計測しながら、両方の羽を個別に作動させるようだ。
環境モニタリングや救援支援、農業での受粉作業などでの利用が考えられているというが、このポップアップ製造方式も超小型の医療機器などへの応用も見込まれるという。
プレスリリースは、ここ に。『サイエンス』誌に掲載された論文は、ここ (要登録)。
2013/05/03
DARPA(国防総省高等研究開発局)で進められているARM (Autonomous Robotic Manipulation)プログラムは、高い自律性を持って多様な作業を行えるマニピュレーターの開発を目的としている。ハードウェア、ソフトウェア、アウトリーチ(一般の人々への広報、教育活動)の3つの部門があり、それぞれチームが組まれている。ハードウェア部門では、3〜4本の指と手のひらを利用して、多様な機能を果たすローコストなロボット・ハンドの実現を目指す。
DARPAが先ごろ公開したこのビデオは、ハードウェア部門で開発を進めるアイロボット社(ハーバード大学、イェール大学協力)のもの。机の上に置かれたクレジットカードをつまみ上げたり、ねじ回しドライバーを認識して、取っ手部分をちゃんとつかんだりする。バットで殴られても壊れないほどのフレキシブルさを備えている。
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このプログラムでは、現在50,000ドルのコストがかかるロボット・ハンドが、3,000ドル(1000個以上製造した場合)まで下げられることを目指している。器用な指先を持ったロボットが、危険な場所でも道具を使って人間同様の作業ができるようになることが目標だ。
2013/05/03
レゴ社のマインドストロームの第3世代製品EV3の発売を8月に控えて、『シンギュラリティーハブ 』が、マインドストロームNXTファンによるロボットのビデオ6本 をまとめている。
1枚の紙で紙飛行機を折って、最後に発射させるロボットも、見ていて楽しい。
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2013/05/03
調査会社ABI が、世界の消費者向けロボット市場に関する調査レポート を発表した。
これによると、2012年の市場規模は16億ドルで、作業ロボット、エンターテインメント・ロボットが大きな位置を占めた。同市場は、2017年には65億ドルと4倍以上の規模に拡大すると予想され、上記2つのカテゴリーに加えて、セキュリティーおよびテレプレゼンス・ロボットが第3のカテゴリーとして台頭してくるという。
世界の傾向として見られるのは、アイロボット社が消費者向けロボットで首位を保っているものの、アジアのロボット会社も同様のロボット製品、そして窓ふきロボットのような新しい製品を打ち出していること。そして、欧米のロボット会社はパーソナル・ロボットのR&D(研究開発)に注力している一方、アジアの会社は作業ロボットを開発することに力を入れているという。
スマートフォンやタブレットに利用されているアプリケーション・プロセッサーやセンサーなどが、この分野のコスト削減に大きく働いている。プロセッサー、マイクロコントローラー、センサー、そしてアクチュエーター、サーボ機構、マニピュレーターを含む部品の市場は、2012年には7億ドル。これは2017年には5倍に拡大するという。
調査ディレクターを務めたフィリップ・ソリス氏によると、消費者向けロボットの発展を阻害しているのは、世界的な不況に加えて、安全性に対する不安だという。ロボットが階段から落ちてきたり、電気コードにひっかかってランプを倒して火事になるといったことを、人々は怖れているという。「解決できる課題だが、コストがかかる」と同氏。
このレポートの目次は見ているだけで面白い。たとえば、「消費者にとっての価値」のところに、手間、時間、コストの削減に加えて、「心の平安が増す」という項目がある。確かに、心の平安を増やしてくれるロボットが欲しい。
同レポートのプレスリリースは、ここ に。
2013/05/03
ロボット研究の第一人者のひとり、ジョージア工科大学のヘンリック・クリステンセン教授が、『IEEE Spectrum』誌のポッドキャストのインタビュー に応えて、ロボット技術が発達することによってアメリカの職を奪うことはないという、楽観的な見方を伝えている。
ジョージア工科大学のヘンリック・クリステンセン教授
中で触れられているいくつかのポイントは:
・コンピュータの発展で起こったように、ロボット技術によってパラダイム変換が起こり、新しい職が生み出される可能性は高い。
・ロボットによって置き換えられる仕事もあるが、(ロボット技術の導入によって)アウトソースされていた仕事が戻ってきた際には、ひとつの雇用に対して、ロジスティック管理などの分野で1.3人分の雇用が生み出される。
・ジョージア州南部に製造工場をつくった韓国の自動車メーカーKIAの挑戦は、マシーンのオペレーターを確保することだった。つまり、技能のいらない職から、特殊技能が必要な人材に需要が移っている。今後それを支えるためのSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)の分野に、十分な数の学生が関心を持っているかどうかが問題。
・3Dプリンティングは、アジャイル(少量、フレキシブル、迅速な)生産を可能にするゲームチェンジャーとなる。在庫コストが不要で材料の利用にも無駄が出ないため、製造コストを下げ、それによって安い製品を大量に生産をすることができるようになる。ここでは製造機械やツールに携わっていた雇用は不要になるが、その代わり今日では想像もできないような製品を考案するような、まったく新しい産業が生まれるはずだ。短期的には雇用は減るが、長期的には雇用を生み出すもととなる。
・われわれは短期的な儲けに目を奪われがちで、また経済や国の財政、雇用などの問題で不安に陥っている。これは、長期的なビジョンを持って、将来どんな機会が待っているのかに対してはっきりした見通しが持てないから起こっていることだ。
2013/05/02
やや前の話になるが、さる3月20日、アメリカのロボット研究界と産業界の代表者たちがロボット研究、産業の現状と今後15年を見通したロードマップを作成し、連邦議会のロボット推進議員連盟に対してブリーフィングを行っている。
その報告書『2013年度版 米ロボットのロードマップ: インターネットからロボティックスへ(A Roadmap for U.S. Robotics: From Internet to Robotics)』は、ここ からダウンロードできる。
このロードマップは2009年に最初に作成され、今回はそれに改訂を加えたもの。アメリカのロボット開発が世界最先端の地位を保ち続け、国内の経済発展に貢献するよう持続的なイノベーションのパイプラインを構築し、国家のリソースを有効に配置することを目的とした提言書という性質のものだ。
オバマ大統領による国家ロボット・イニシャティブ(NRI)の設立は、2009年版のロードマップ提出に端を発している。今回のロードマップの作成には、NRIの補助金を受けて活動する産学組織ロボティックスVO (ロボティックス・バーチャルオーガニゼーション)があたった。
内容は、製造、健康・医療、サービス、宇宙開発、軍事の5分野に分かれている。まだ細かく目を通していないが、要約とされたページに興味深い記述がいくつかある。
・ロボット技術は、次の10年間にコンピュータ技術と同様にユビキタスになると予測され、国の未来を変える。
・フレキシブルな製造にロボットを活用することで、低賃金な他国へのアウトソーシングにも競合する生産システムを確立することは可能。
・ロボット技術は、短期的には雇用促進と生産性向上、工場での安全性向上に貢献する。国内での雇用を加速化させ、長期的には高齢化社会における生活の質を高める。
もっとも関心を引かれたのは、「各分野で5、10、15年の短期、長期におけるロボット技術の応用をとらえ、そこで求められる重要な機能性、そしてそうした機能性を可能にするために必要とされるテクノロジーを洗い出した」という部分。
現状から将来までのロードマップを俯瞰して、随所で必要な機能技術をピンポイントするとは、明快な合言葉を掲げるようなもの。これに刺激されて、多くのスタートアップも生まれてくることだろう。
2013/05/02
オレゴン州のスタートアップが、アメリカで「ドローン」と呼ばれる無人航空機をやつけるテクノロジーを、一般消費者向けに販売する予定という。
その名も、ドメスティック・ドローン・カウンターメジャーズ社 (直訳すると、内地ドローン対策技術会社)という同社は、2015年以降無人航空機が解禁になる見通しのアメリカの空に大きな商機を見いだしているようだ。無人航空機は、上空から写真やビデオ撮影をしたり、種々のセンサーを作動させたりできるため、プライバシー侵害の危惧がさかんに取りざたされている。同社は、ごく一般の人々にその対処技術を与えようというのだ。
ただし、「やつける」と言っても、飛んでくる無人航空機を撃ち落とすわけではないらしい。さまざまなシステムのレイヤーを用いて、センサーや赤外線、カメラなどの機能を妨げるのだと、同社のプレスリリース では説明されている。大小さまざまなエリアを保護できるという。さらに、いくつかの報道をまとめると、同社はすでにこのためのパテントを有しているが、用いるのは既存のテクノロジーばかり。その組み合わせを製品化した。また、製品は箱のようなデバイスで、無人航空機の飛行を感知して作動し、持ち主にもはっきりわかるような動作音を発するらしい。価格はドイツ車くらいというのだから、決してお安くはなさそうである。
同社の親会社であるAプラス・モバイル社 は、もともと軍事用のロボットや無人航空機の操作ユニット技術を提供してきた会社。そこで得られた技術や知識を、今度は逆の方法で利用しようということになる。プレスリリースには、「無人航空機の商用化は、軍事用に開発された技術を自国市民に対して向けようとするもの。わが社は、軍事用技術を商用化して、内地の無人航空機対策に転換する任を背負うことにした」と書かれている。
これだけ読んでも、無人航空機と、その害を防ごうとするイタチごっこが早くも予想される。同社では、無人航空機対策技術の市場は、現在の無人航空機市場と同程度の規模になると見ているという。
関連記事は、ハフィントン・ポスト 、ポピュラーサイエンス にもある。
2013/04/29
ロモーティブ(Romotive) 社の「ロモ(Romo)」は、スマートフォンが小型戦車のかたちをしたドッキング・ステーションに載っているといった構成のロボットだ。このロモは、プロトタイプ時にクラウドファンディングのキックスターターで大人気を得て製品化へ進み、その後同社はスタンフォード大学のベンチャーファンドやセコイヤキャピタルなどから総額650万ドルの投資を受けた。
ロモは、コンピュータやモバイル・デバイスからの操作が可能で、回転や走行しながら写真やビデオを撮影できるほか、顔認識機能でユーザーを見分けて表情を作ったり、音楽のリズムに併せて動いたりする。また、電池が切れると自律的に充電ステーションへ向かう。
スカイプなどのテレコン機能を利用すればテレプレゼンス・ロボットとなるし、カメラを遠隔地から起動させることでセキュリティー・ロボットとしても役に立つ。オープンプラットフォームで、デベロッパーたちのアプリ開発も進む。150ドルの多機能おもちゃロボットとして、大きな注目を集めている製品だ。
同社CEOのケラー・リノード氏に、ロボニュースがインタビューした。
ケラー・リノード(Keller Renaudo) ハーバード大学では、経済学と社会学を専攻しながら、ヤーコブ・ベネンソン教授の元でRNAやDNAを利用したバイオ・コンピュータの研究に携わった。2009年の卒業後は、スタートアップのジョブスパイス(JobSpice)社を経て、2011年にロモーティブ(Romotive)社を共同創設。26歳。
Q. そもそもロボット分野とは、どんなつながりがあったのですか?
A. 実は、ロボットの専門知識はありませんでした。ただ、ロモーティブ社の共同創設者であるピーター(・シード)は機械エンジニア、またフー(・ニューエン)はソフトウェア・エンジニアかつデザイナーです。僕自身は、システム・デザインの知識が少々あり、またスタートアップの経験もあった。みんなで技能を持ち寄ったというところです。
Q. ロモのアイデアはどこから来たのですか。
A. 最初からロボットを作ろうとしていたわけではありません。スマートフォンを頭脳部分にして何かできないかと話し合っていたんです。そして3人でロモのプロトタイプを作ったら、けっこういけるんじゃないかということになった。2011年のことです。ただ、プロトタイプを回りの人たちに見せたら、スマートフォンは高いものなのに、こんなものに載せたら壊れたりして、無謀だと言われました。
Q. その後、キックスターターで資金を募るわけですね。 続きを読む
2013/04/29
MITテクノロジー・レビューのサイトに出ているのは、リシンク・ロボティクス社の「ブルーカラー・ロボット」バクスターのクロースアップ。全容はここ で。
一緒に並んで仕事をする工場作業員が、バクスターに腕の動きを教えて、それをボタンでレジスターするという簡単さも売りだ。顔の表情もいろいろあって、それによって作業のステータスがわかるようになっている。
しかし、外見は単純に見えるが中味はやっぱりロボット。
2013/04/29
ドイツのデューイスブルク・エッセン大学の脳科学者らの研究 によると、人はロボットが虐待を受けている様子を見ると、否定的な感情がわき起こってくるのだという。
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この研究は、fMRI装置をつけた被験者が、恐竜ロボット「プレオ」が逆さ吊りされたりプラスティック袋を頭からかぶさられたりしている上のようなビデオを見せられた。その結果、脳は女性が虐待を受けているビデオに似た反応を見せたという。
人はロボットに感情移入し、ロボットは老齢者や子供のコンパニオンとして寄り添う。そんなロボットと人間の関係がありえることが、証明されたということになる。
『IEEE Spectrum』の記事は、ここ 。