「家庭用菜園のためのロボットも出てくるでしょう」。グリシン・ロボティクス社ヴァレリー・コミッサロヴァ氏インタビュー
ロシアを拠点にするグリシン・ロボティクス社は、いち早くロボット分野への投資を目的に設立されたベンチャーキャピタルである。創設者のディミトリ・グリシン氏は、ロシアのインターネット会社Mail.Ruを設立した人物で、ロボットへの関心が高く、個人資産2500万ドルを元に投資を行っている。同氏についてはロボニュースでも以前取り上げたことがある。
グリシン・ロボティクスは、起業したばかりのスタートアップへのシード投資が中心で、対象は一般消費者向けのロボット会社。現在同社が投資しているスタートアップには、ナノサティスファイ社(極小衛星を製造)、ロボッツアップス社(ロボットのためのアップ・ストアー)、ダブル・ロボティクス社(iPadを利用したテレプレゼンス・ロボット開発)、スヴィヴル社(被写体に合わせて動くビデオ・キャプチャ技術開発)、ボルトio(ハードウェア・インキュベーター)などがある。
先頃『ロボビジネス2013』会議に参加し、いくつかのパネルでモデレーターも務めていた同社の事業開発ディレクター、ヴァレリー・コミッサロヴァ氏に、グリシン・ロボティクス社の投資ビジョンなどを尋ねた。
Q. 現在の投資企業は何社ですか。
A. 2013年9月に初めての投資を行い、現在投資先は5社あります。現在、6社めを検討しているところです。
Q. なぜロボットを専門に投資するのですか。
A. 創業者のディミトリは大学でロボットを専攻し、ハードウェアに対してパッションを持っているからです。それはインターネット企業を立ち上げても変わりませんでした。グリシン・ロボティクス社が作られたのは2年前のこと。カメラや加速器などの部品がどんどん安くなり、大きな資金がなくてもロボット会社が作れるようになった。3Dプリンティング技術もそれを後押しし、クラウド・ファンディングのような資金の集め方も、これまでとは違ったかたちで製品作りをすることを可能にしました。グリシン・ロボティクス社は、そんなロボットを取り巻く環境の変化を受けて設立されました。
Q. どんなロボット分野に投資するのでしょうか。
A. ひとつは、一般消費者のためのロボットです。賢い方法でハードウェアとソフトウェアを組み合わせたもの。またB2Cの分野にも関心を持っています。たとえば、ハードウェアのインキュベーターであるボルト社(Bolt)はポートフォリオ会社の1社ですが、ロボットのエコシステムをつくる基盤となると考えた結果です。その企業がやることに特定の価値があるかどうかが、決め手になります。投資しない分野は、産業用、軍事用ロボット、サービス・ロボット。また、おもちゃロボットもやりません。とは言え、われわれが賭けているのは、そのスタートアップのチームです。必要に応じてアプローチを変えていけるかどうか、そんなことも見ています。
Q. 日本では介護ロボットが話題になっていますが、日本のロボット開発には関心がありますか。
A. 確かに高齢者の増加は、ロボット技術を促進する元になるでしょう。しかし、日本のロボット開発は非常に洗練されたヒューマノイド型を目指していて、今のところ実現するのが難しく、コストも高くなりそうです。われわれは、もっと大衆向けの解決策に目を向けています。たとえば、現在はスマートフォンをうまく使ったロボットなど、異なった複数のデバイスを特定の用途のために一体化するといった方法論もあります。要は、どのくらいの規模のユーザーのために、どんなタスクを提供するのかといったポイントが違うのです。
Q. 新しいロボット開発については、どのように情報を得るのですか。
A. 大学にある技術がどう商用化され得るか、その部分には情報が溢れるくらいあります。そこでの技術が、ビジネスのインフラにどうフィットするのかを検討します。そして、達成可能な目標を計測可能な方法でこなしていけるものかも、重要な点です。
Q. あなたはディミトリ氏の右腕として、世界中を駆け回っておられるようですが、どんなバックグラウンドをお持ちですか。
A. 私はこれまで、ソフトウェア・エンジニアとマーケティングや事業開発というふたつの分野でキャリアを積んできました。父が自動車メーカーのエンジニアをしていたこともあり、ハードウェアとも無縁ではありません。
Q. これからのロボット開発の行く先をどう予想していますか。
A. われわれは、おもしろいバーティカル(縦割りにした業界での発展)は何かを見ています。その目で捉えると、ドローン(無人航空機)は関心がありますし、ルーンバが切り開いたホーム・オートメーションも面白い。ここでは掃除、洗濯ロボットや、コネクティッド・キッチンも出てくるでしょう。また、これからの食料問題を考えると、消費者向け農業、家庭用菜園のためのロボットも出てくる。自走車、コネクティッド・カーも興味深い分野です。