トヨタがシリコンバレーにロボットとAIの研究所を設立。プラット氏の指針は?
去る9月に、トヨタがスタンフォード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)と共同でロボットとAIの研究を行い、それを元DARPA(国防高等研究計画局)のギル・プラット氏が率いるというニュースを伝えたが、その後さらに動きがあった。
トヨタがシリコンバレーに研究所 (Toyota Research Institute=TRI)を作り、その所長にプラット氏が就任するというものである。すでに日本でも報じられているが、『IEEEスペクトラム』がプラット氏のコメントも交えて伝えている。
それによると、トヨタは今後5年間にわたって10億ドルをTRIに投入する。場所はスタンフォード大学のお膝元であるパロアルトで、第2施設をMITのあるボストンに設ける。来年1月から本格的に始動する予定で、200人の研究者らを雇い入れる予定のようだ。
トヨタが発行したプレス・リリースはここにある。
以前のニュースでも明らかだったように、トヨタでは完全な自律走走車を目指しているのではなく、あくまでもドライバーをサポートする技術を開発する。その開発を加速化するために2大学と共同研究を行うということだった。
『IEEE スペクトラム』でのコメントによると、プラット氏は「運転の楽しみは残しておけばいい。それを安全にやるための技術開発が求められており、それによって幅広い年齢の人々がドライバーになれる」と語っている。それでも、高速道路での走行や駐車時では、自律的な機能が役に立つ。そうした柔軟な切替が可能な自律走行車を目指しているということだろう。
そのほか、プラット氏のコメントの要点は以下:
・屋内でのモビリティー開発で学んだ技術を自走車にも利用するほか、家の中でモノを取ってきたりするロボットも開発する。
・TRIの役割は幅広くフレキシブルで、さまざまな先端技術を試す。ただ、基礎研究と製品開発とのギャップを縮めることはミッションのひとつである。それを実現するために、実現可能なプロトタイプをつくる、あるいは中間的なマイルストーンを設けて、何が可能かを探っていく方法論が必要。その都度、これはうまく機能するか、何が利点で何が欠点か、この技術は未来の自動車の部品として開発を進めるべきか、あるいは家の中で使えるロボットの機能に役立つか、といった点を検討する。
・資金の一部はスタートアップへの投資に向けられる。投資は金を儲けるためではなく、新しいテクノロジーを育成するための手段と位置づけられる。その一例は、画像や近接センサー技術である。LIDARによってマップ生成や自律走行技術が前進したが、値段が高い。こうしたセンサーをもっと安くする技術はトヨタも開発しているが、他の場所も探す。
・大学は、今後の人材を育成する場所として重要。したがって、教授や研究者をただ利用するのではなく、そこでの人材育成をサポートする立場になることが必要である。また、研究に携わってきた学生が産業界へ移行しようと決めた際には、いい選択肢を与える。もっとクリエイティブになれ、優れた人々と一緒に仕事ができ、自分自身もさらに才能豊かになるような環境だ。もちろん、それを楽しくやるのだ。
記者会見では、35年前の写真も披露された。カローラのブレーキを修理中のプラット氏である。「かっこいい髪だね」と豊田氏がコメントしたとのこと。