<イベント・レポート>ロボット、AI関連本の著者3人のパネル開催
さる7月16日、サンフランシスコで最近ロボットとAI関連の本を書いた著者3人のパネル・ディスカッションがあった。シリコンバレー・ロボティクスの主催だ。
参加した著者は以下の人々だ。以下のうち、フォード氏の著書は既刊だが、あとの二人の本は8月発売の予定。
・マーティン・フォード: 『Rise of the Robots: Technology and the Threat of a Jobless Future』著者。コンピュータ・デザインとソフトウェア開発の会社を起業。ミシガン大学アン・アーバー校でコンピュータ・エンジニアリングを専攻、UCLAでMBA取得。
・ジェリー・キャプラン: 『Humans Need Not Apply: A Guide to Wealth and Work in the Age of Artificial Intelligence』著者。4つの企業を共同創業した経験を持つ連続起業家。『Startup: A Silicon Valley Adventure(邦訳『シリコンバレー・アドベンチャー』)がベストセラーになった。
・ジョン・マルコフ: 『Machines of Loving Grace: The Quest for Common Ground Between Humans and Robots』著者。ニューヨークタイムズ紙記者。テクノロジー、ロボット、科学を追う記者として有名。(ロボニュースのインタビュー<その1><その2>)
議論は、ロボットやAIによって人の職がなくなってしまうのかから始まったが、内容はかなり錯綜した。観客からも積極的に意見が出たが、職が奪われても異なった職が生まれる、構造的な非雇用時代が始まる、そもそも人々は今日で言うところの仕事はもうしなくなる、その一方で商品を箱詰めするような作業員は人不足などなど、多様な意見が出た。
興味深かったのは、マルコフ氏の「ロボット革命が最初に叫ばれて65年も経つ。もっと役に立つロボットが出てきていいのだが、まだそれがない」という意見。キャプラン氏は、それに対して「核心的なのはデザインの問題。かつて蒸気機関と船をくっつけた人が、蒸気船を発明した。そうしたことがロボットではまだ起こっていない」と返した。
また、フォード氏は、「日本では人口構造変化など、アメリカがいずれ経験することが先に起こる。これは建設や医療などのすべてに影響を与える。賃金は低下し、仕事をする人間も消費者も少なくなる」と予想する。いずれやってくる「ポスト労働時代」が、最終的にわれわれが行き着くところだという点で3人の見方は一致していたようだ。
ただし、キャプラン氏は「かつては仕事とは、農業などの労働を指した。現在われわれがやっている仕事は、昔から見るとレジャーだ」と説明。「おそらく今はレジャーと思っているものが、未来では仕事になるのではないか」。この見方には、何か励まされるところがある。さて、そんな時が来たら、どんなロボットが必要とされるのだろうか。