ユニバーサル・ロボッツ社訪問記
ロボニュースは昨夏、デンマークにあるユニバーサル・ロボッツ社の本社見学に出かけた。ヨーロッパでの「ロボビジネス会議」のテクニカル・ツアーの一環である。
「大変」遅ればせながら、そのレポートをお届けしたい。尚、文中に出てくる内容、数字等は当時のもの。
同社は、以前ご紹介した「ロボットと頭脳の町」と呼ばれるデンマークのオデンセに位置している。あたりは広々とした景色で、ユニバーサル・ロボッツ社の本社も悠々とした雰囲気で建てられている。この社屋には少し前に移転したばかりとのことだった。
ロビーからはガラス越しに中庭が見える。中庭の回りに研究部門が配置されているという。現代風の美しいデザインの建物だ。
今回のツアーを案内してくれたのは、同社CTOのエスベン・ハレベック・オスターガート氏。ロボニュースでは以前同氏のインタビューを行っており、そこで同社の創設話が語られているのでぜひ読まれたい。
同氏によると、2005年に創業したユニバーサル・ロボッツ社は、現在急成長中とのことで、日々拡大しているという。世界中に200社を超えるディストリビューターを抱え、毎月100〜120台を生産している。
簡単な説明の後、最初に案内されたのはトレーニング室だった。新しいユーザーやディストリビューターがここへ来て、ロボットの使い方を学ぶのだ。
ユニバーサル・ロボッツ社では製品を製造するだけで、ソリューションはディストリビューターが提供する。そして、すでに同社のまわりにはコミュニティーが形成されていて、たとえば下の写真にあるように、アーム部分でコードを留めておくバンドを作った会社もあるという。
テスト・エリアでは、1本アーム、2本アームの製品が延々とアームを動かしていた。ここでは重量テストを行っており、 テストはそれ以外にも加熱・冷却、ストレス・テストを行っているという。ここでのテストには、約2日間かけられる。
同社製品は、簡単でフレキシブルで値段が安いことをアピールしている。だいたい3〜8ヶ月で投資の元が取れるという。また、単純な作業を続けるような現場向きで、このターゲット市場から外れる計画はないという。
デンマークには小さな工場が多く、そうした市場向けに考案された同社の製品は、知能を持つロボットというよりは「道具」という位置づけだと、オスターガート氏はよく語っている。
これに比べて、リシンク・ロボティクス社のバクスターは、センサーやビジョン、コントローラー、インタラクションを一体化したもので、ユニバーサル・ロボッツ社の製品とは異なる。従って、バクスターとは競合しないというのが同氏の見方だ。また、バクスターに比べてユニバーサル・ロボッツ社の製品は「強固」だとも加えた。
ユニバーサル・ロボッツ社の戦略は、専門でないことには手を出さないというもの。それでも、同社の回りにサプライヤーを育てていくことを目指している。
もともとは小さな工場向けに作ったロボット製品だが、現在ではBMWなどの大手自動車工場でもよく利用されているのは周知のところだ。それ以外にも、フィジカル・セラピー(リハビリ)に用いられたり、車の後ろに装備して、路上に設置したセーフティーコーンを掴み上げるなどの目的に利用されていたりするという。ロジスティクス、食品、エンターテインメントでの利用も広がっているようだ。
同社はパーツの製造は行わず、すべてアウトソースしている。 この工場ではアッセンブリーとテストを行うだけだ。
簡単な製品に見えるし、また他のロボット・メーカーも現在コー・ロボットの開発に余念がない。そうした中で勝ち抜けるのか。
オスターガート氏は、「ともかく先手を打って、いつも先を行く」と語る。新しいマーケットにはいつもさまざまなニッチがあり、そこに発展の機会があるというのだ。そして、現在のロボット業界は、ちょうどユニックスからパーソナル・コンピュータへ移行したのと同じような時代だと同氏は見る。これから面白い展開が待ち受けているのだ。