なぜロボットはコーヒーを買いに行くのか?
『IEEE Spetrum』誌が、「ロボットがコーヒーを買いに行くのが、なぜ大切なのか」を説明している。同誌に寄せられたコメントへ回答するために書かれた記事らしい。
というのも、ロボット研究はおもしろそうに見えるけれども、一体それが現実的にどんな役に立つのかわからない、というタイプのものも多いからだ。記事では、スタンフォード大学のPR2が独りでコーヒーを買いに行くのが、ロボット研究をどう推し進めるのかを解説する。ポイントは以下。
- 複数の2Dマップの間をナビゲートする: 可動型ロボットは、いろいろなフロアー間をナビゲートするのがたいてい苦手だが、スタンフォード大学の研究者たちはポータルを経由して複数の2Dマップがリンクされるゲートウェイを開発した。
- 自信をもってエレベーターに乗降する: ロボットが自律的にエレベーターを利用するのは簡単ではない。まずエレベーターを見つけ、上下を判断してボタンを押し、エレベーターが到着したのを感知し、人がいないことを確認して乗り込み、正しいボタンを押し……、と無数の判断をビジョンと操作を駆使して行う。
- ガラス張りの重いドアを開く: ロボットが透明なガラスを認識するのは困難だが、アメリカ障害者法(ADA)では、ドアの取っ手は同じ高さに設置することを義務づけている。PR2はこの高さに取っ手の表面を認めるとそこにドアがあると認識する。重いドアを開けてそのままに保つのは、PR2のベース部分の重力とパワーを利用している。
- 人とロボット間のやりとり: コーヒーを受けとる際には、店員がPR2の手にカップを強く押し付けてくれた方が簡単だが、研究者たちは手に取り付けられたカメラが物体を感知し、その後グリップ(つかみ)を作動させるようにしている。人間同士のような、手荒でないやりとりを可能にするためだ。
こうしたこと以外にも、実際にロボットにタスクを与えることで、現実世界で起こりえるさまざまな課題を意識するきっかけになる。人がいたり障害物があったらどうするか、エレベーターで先に誰かが異なったフロアーのボタンを押していたらどうなるか、ドアのところで人が出入りしていたらどうなるかといったことだ。
ロボットにコーヒーを買いに行かせるのはただ面白がっているからではなく、大切な研究成果を現実に活かすための方法だと記事は強調している。
ビデオはここに。