『ロボビジネス2014』会議レポート<その2>会場でみかけたロボットたち
今回の『ロボビジネス2014』展示場には、80社近いロボット関連会社が出展していた。目立ったのはヨーロッパからの参加。また、ロボット開発をサポートするテスト施設、設計・製造支援会社なども見られ、現在のロボット業界の幅広さが感じられた。
以下に会場で見かけたロボットをご紹介しよう。
堂々と自社製品のタグ(Tug)を展示していたのは、エーソン社。病院内でシーツや食事、薬品などを運ぶ自走運搬ロボットだ。サービス・ロボットとしてはすでに多くの病院で導入され、エーソン社はロボット会社の成功例として注目を集める。
同じく、病院向け運搬ロボットを開発するのがヴェクナ社だ。同社はボストンを拠点とする会社で、病院の患者が使えるオンライン・システムなど医療用情報システムを開発してきた。運搬ロボットは4、5年前に市場に投入した。
製品のQCボットは、エーソン社製に比べると後発ということになるが、病院に限らず発送センターや工場などでの利用も想定している。後発な分だけ全方向性の新しいセンサー技術を統合することができ、障害物をより遠くから感知し、走行速度も最高毎秒1メートルと速いという。
こちらは、Hstarテクノロジーズ社の医療用アシスタント・ロボット。自走技術、カメラ、6軸のアーム、トレーなどを備えている。
韓国のユージン・ロボット社も。これは、レストランや病院で食事を運搬するロボットのプロトタイプ。ボックス部分は、スウェーデンの会社が開発したものという。
なぜかテレプレゼンス・ロボットの出展は少なく、見かけたのはダブル・ロボティクス社のみ。
アーム開発会社はいくつか出展していた。ロバイ社、キノヴァ・ロボティクス社など。
ところで、このキノヴァ・ロボティクス社の3本指のジャコ(Jaco)アームは電動車椅子に装着して、身体障害者が手元で操作できるようにした例がたくさんあるようだ。下のビデオをご覧いただきたい。ちょっと感動的。
下は、出展企業のリウォーク社のエクソスケルトン(外骨格)を付けたユーザー。
昨年も出展していたファイブ・エレメンツ・ロボティクス社のお買い物サポート・ロボット「バジー」。ユーザーの後をついて回るかわいいロボットだ。こちらは2つめのバージョンで、障害物を感知するセンサーが強力になり、走行速度も速くなったとのこと。現在は空港などへのアピールも行っているようだ。
スイスのアンドリュー・アライアンス社で開発されているのは、ピペット・ロボット。ピペットとは、化学実験などでごく少量の液体を扱うスポイド状の器具のことだが、これをずっと使い続けるのは腱鞘炎にもなるほどの疲労感を伴うという。このロボットは、そんな作業を受け持ってくれる。操作設定は、コンピュータ画面上のドラッグ&ドロップで行えるようになっている。
リシンク・ロボティクス社のバクスターは、この手の展示会ではもう常連。ソフトウェアがアップグレードされ、今夏から導入が増えたようだ。
ユニバーサル・ロボッツ社も、新しい製品とプラットフォームを展示。 これまでは計算が大変めんどうだったリスク・アセスメントのための設定を、簡易にできるツールを開発した。スピードや動作エリアなどを入力する。同社の製品は、もともと中小規模の工場向けに作ったが、同社CEOのエスベン・オスターガード氏によると「最近は自動車メーカーなど大企業での導入が多い」とのこと。
写真ではよく見ていたが、ここで本物に遭遇。鉢植えを運搬し、自動的に並べるハーベスト・オートメーション社のロボットだ。脇目もふらずにせっせと動き続ける働き者。注目される農業ロボットのひとつだ。
エンドエフェクター、マニピュレーター会社はいくつか出展していた。ここでは研究環境から生まれて間もない2社をご紹介。
エンパイアー・ロボティクス社のヴァーサボールは、コーネル大学での開発された技術が元になっている。写真では球体の形状だが、これには長いもの、フラットなものなどいくつかのバリエーションも可能という。ヴァーサボールは、かたちが異なる複数のものを箱詰めするといったような作業に合っており、膨らませたヴァーサボールから空気を抜くことによってモノをつかむ。ヴァーサボールの中には、細かな粒子素材が詰まっていて、それが真空状態に近くなってガッチリとモノを把握するしくみだ。
共同創業者でCTOのジョン・アメンド氏によると、中に入れる素材として最初はコーヒー粉を利用していたが、 使用が重なるにつれて粒子が細かく壊れるなど耐久性の問題が発生。現在利用している素材は「企業秘密」とのこと。
創業2年後の現在、同社の社員は7人。最終的な製品化へ向けて開発中という。義手などでの利用も可能だという。
ソフト・ロボティクス社は、ハーバード大学での研究から生まれた技術で起業。動きは、ちょっと海底生物のよう。
こちらがビデオ。手に持って使える。
SRIのロボティクス・グループも出展。『スーパーフレックス』は、エクソスケルトンの次を行くロボットスーツを開発するためにDARPAが補助する「ウォーリア・ウェブ」プログラムから生まれたもの。多数のセンサーを搭載し、下着のように身に付けて筋肉をサポートする。使用される素材の糸や織り方にも工夫が施されているようだ。
SRIが出展していたもうひとつのロボットは、微細な動きができるテレマニピュレーター『トーラス(Taurus)』。SRIは手術ロボットのダヴィンチ技術を生んだ研究所として知られるが、ほぼ同じくらいの細かな作業を、このロボットでは車に積んだ爆弾の信管除去のために行う。ロボットが送る三次元画像を見ながらオペーレーターが遠隔地から操作、手元には触感フィードバックもあるらしい。
最後に、今年のトレンドを象徴する会社を。 ロボットは稚拙な見かけだが、実はこの会社ブレーン・コーポレーションのAIを統合したOSで動く。何度かコントローラーを用いて手動で走行ルートを教えると、そのうちそれを学び、障害物を避けながら自律走行する。同社は、コンシューマー・ロボット向けのソフトウェア、ハードウェア、クラウド・サービスを提供する。
同社のビデオはこれ。
AIは、今年から加わった新しいトピック。ロボット開発にも便利なAIサービスが使える日がやってきたのだろうか。このテーマについては、近く改めて取材をしたい。