ボストン・ダイナミクスの「スポットミニ」が、来年発売へ
ここのところ立て続けに、アトラスやスポットミニの新しいビデオを発表しているボストン・ダイナミクス社。創業者兼 CEOのマーク・レイバート氏が5月11日、テッククランチの『セッションズ・ロボティクス』会議に登壇し、スポットミニを来年半ばに発売することを明らかにした。
あの犬ロボットが手に入る日がやって来ようとは……。ただし価格は未定だ。
これまでの古いバージョンのスポットミニはビデオでも遠隔操作されていたが、最新ビデオでは初めて自律ナビゲーションの様子が公開されている。前方に2台のステレオ・カメラ、後方と両側面にもカメラを備え、マニュアルで走行させた後に、そのマップにしたがって自律ナビゲーションする。障害物を回避したり、階段を昇降したりする。
この新バージョンは、前バージョンの10分の1のコストに抑え、現在製造用にかなり近い設計に基づいて10台作っている。製作は社内で行なったが、委託製造業に詳しい専門家のアドバイスを得たという。また、今年中に委託製造企業によって100台を生産、来年半ばにはより多量生産する計画だ。同時に、POC(プルーフ・オブ・コンセプト=概念実証)として、潜在顧客とテストに入る計画という。潜在顧客は、現在想定している利用方法を試すことになる。
肝心のその利用方法だが、壇上の発言では、アームの先にカメラを搭載するなどしてサーベイランス・パッケージを提供することをまず考えているようだ。その他には、高層ビルの階段室の監視、建設現場用のデータ取得などにも言及された。車椅子に代わる障害者用の移動手段(ハイキングなど)という提案も受けているという。
スポットミニは、ハードウェアとソフトウェアのプラットフォームとして想定されている。アームなしで発売されるが、サードパーティーの開発者が独自のハードウェアやソフトウェアを搭載することができる。
今回は、「製品」という言葉がレイバート氏の口から何度か出てきたことは注目に値するだろう。
「グーグルに買収される前のボストン・ダイナミクスは、ブルースカイ的な研究開発を行なっていた。グーグル時代は、スポットミニもオフィスやいずれ家庭で利用できるのではないかと探索した。現在のソフトバンク下では、一方で研究開発を保ちながら、製品化にも努めている」と同氏は説明した。「マサヨシ(孫正義氏)は、今すぐ、10年後、30年後、300年後の計画を同時に持っている。これは我々にも合っている。すぐに使えるものを考えつつ、満足できるロボットを作るには長期的な視点が必要」。
長期的な研究開発を進める中で、そこから生まれる仕組みやコンポーネントは実用的な用途にも使えるという。アトラスならば、2本アームのマニピュレーション、ボディとのコーディネーション、油圧システム、バルブ、パワーサプライなどが挙げられる。
同氏は、ロボットはインターネットよりもっと大きなものになると言う。「ロボットは、世界のあらゆるものに触れて、マニピュレートする。時間はかかるが、インパクトは大きい。他のロボット関係者と共に、我々もその実現に努力している」。
何れにしても、スポットミニを普通に目にする日は近くなった。