ホーム・ロボットへの2つのアプローチ
本格的なホーム・ロボットは出てきそうで、やはりまだ時間がかかりそうである。だが、ホーム・ロボットの登場をどうにかして早めたいというロボットの関係者の気持ちが伝わってくる記事を2つ見つけた。
ひとつは、AIが家庭環境をバーチャルに学習できるビジュアル・プラットフォームの「AI2-THOR」。『IEEEスペクトラム』が伝えている。
THORは、「The House Of inteRactions」の略で、AI2というのはこれが開発された人工知能研究のためのアレン・インスティテュート(Allen Institute of Artificial Intelligence)を意味する。AI2は、マイクロソフトの共同創業者であるポール・アレンがシアトルに創設した研究所で、コモンセンスAIなどのプロジェクトを進めている。
AI2-THORでは、キッチン、リビングルーム、バスルーム、ベッドルームが合計120のフォトリアリスティックなシーンで再現されている。その中には、冷蔵庫、マグカップ、ブラインド、蛇口など日常的なモノが散りばめられ、インタラクティブに操作可能なものも多い。
部屋を移動する途中で椅子にぶつかると、椅子の重量などの物理原理も適用されていて、それらしく倒れる。そうしたインタラクションからAIが現実的な学習ができるはずだと、研究者らは述べている。キッチンでリンゴを切ったりもできるようだ。
AI2-THORはオープンソースで、誰にでも利用可能。論文はここ。
ロボットをお迎えする家のデザイン
ホーム・ロボットに関するもうひとつの記事は、これとは反対に、ロボットを迎えやすくするためには家の環境をどんな風に作り替えなくてはならないのか、という内容だ。『ワイアード』が伝えている。
ここで言及されているのは、ワシントン大学の研究者であるマヤ・カクマック氏の見方だ。ロボット・フレンドリーな環境とは、高齢者や障害者にふさわしいユニバーサル・デザインに通じるところもあるという。
ポイントは以下である:
- 壁が少なく、段差もないオープン・プランにする。
- どの部屋にいるのかがわかるビジュアルのウェイポイント(わかりやすい家具や照明器具など)を配置する。
- 掴みやすいように、丸いモノよりも四角いモノを増やす。落下に備えてプラスティックを多用すること。
- ボタン操作ではなく、wifi経由でスイッチが入るようにする(家庭機器など)。
- トイレは広々ととり、掃除ロボットが作業をしやすくする。
- 光り物、透明物を避けて、マット素材を多用。
- 充電スペースを特設する。無線充電もいずれ実用化されるだろう。
- ドアや戸棚の扉は、センサーで開閉式にする。
- 人間の位置を認識して(ウェアラブルや携帯などで)、ロボットが邪魔をしないようにする。
- 洗濯物を畳んでくれるロボットが登場すれば、洗濯機は洋服ダンスのある寝室に置くのが効率的。
- それでも、ロボットが素材から料理をしてくる日はまだ遠い。出前のミールキットを入れておくスマート冷蔵庫やスマート・オーブンを、ロボットが遠隔から操作できるようにしておく。
- 庭は、太陽光利用のロボットのために屋上に設置。芝刈りロボットのための小屋も忘れず。
ロボットを家庭に近づける、家庭をロボットに近づける。この2つのアプローチの中間で、本物のホーム・ロボットが実現されるのだろう。