ロボットに代替されない才能は、実は極めた文系?
今や、将来確かな職業を得るためにはSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)分野が重要だと、アメリカでは幼児のオモチャにもプログラミンング要素が盛り込まれるようになるほど、STEM教育が加熱している。
ところが、『CNBC』がマーク・キューバン氏やグーグルの経営陣の話として、大学で「ロボット耐性」のある学問を修めようとするのならば、別の方向を見ろと伝えている。
マーク・キューバン氏は、1990年代にストリーミング・ビデオ会社をヤフーに売却して一躍有名になった。起業家、投資家、そしてプロバスケットボール・チーム、ダラス・メイベリックのオーナーである。
記事によると、そのキューバン氏は将来ロボットに代替される職業は、現在人気の会計やプログラミングなどの専門職も含まれると見ている。一方将来価値のある専門分野となるのは、哲学、社会学、英文学など。後者は今、大学で専攻して一生懸命勉強しても一番職が得にくいとされるものだ。
キューバン氏がこうした文系の専門分野を挙げるのは、人工知能が多様な職業を自動化していく中でも、独自の判断力、批判的思考、クリエイティビティーが重要な才能として残っていくからだ。
キューバン氏のこの発言は、さる3月に開催されたSXSW でのものだが、アルファベットのラリー・ページCEOのアドバイザーを務めるジョナサン・ローゼンバーグ氏も同意しているという。同氏は、認知力や分析的思考は人工知能で取り替えるのは難題であり続けるという。
マッキンゼーが昨年発表したレポートによると、全職業の60%がテクノロジーの影響を受け、その仕事の30%が今後数年の間に実際に自動化される。そうでなくとも、幅広い職業が人工知能やロボットのせいでなくなってしまうことに人々は戦々恐々としているところだ。だが、同レポートも、クリエイティビティーや人をマネージする才能はもっとも代替の可能性が低いとしている。
ただし、だからと言って、人工知能やプログラミングの技能を無視しろということではない。これらは、今後誰にとっても必要な知識になるのではないだろうか。キューバン氏も、「最初のトリリオネア(1兆長者)は、人工知能を本当にマスターした人物になるだろう」と語っている。
だが、それを超えて長期的に見ると、もっと人間的な視点や才能が貴重なものになる。文系の人々には希望をなくすことなく、そしてロボット関係者には文系の知識も蓄えておこうという呼びかけだろう。