<イベント・レポート>『ロボビジネス・ヨーロッパ2016』その① 会場にいたロボットたち(前編)
ロボットの展示会と会議で知られる『ロボビジネス』のヨーロッパ版が、さる6月1〜3日デンマークのオデンセで開かれた。
オデンセは、「ロボットの町」として名乗りを上げ、町中でロボット・ビジネスを盛り上げている場所だ。南デンマーク大学やスタートアップの養成所、デンマーク技術研究所などさまざまなところでロボット・ビジネスが育成されている。大きな成功を収めているユニバーサル・ロボッツ社もここが拠点だ。
展示会会場には、オデンセやデンマークのロボット企業のものを中心に、いろいろなロボットが展示されていた。
まず、目についたのは種々の自律搬送ロボット。
下は、デンマークの希望の星モバイル・インダストリアル・ロボッツ(MIR)社のもの。このように上にシェルフを載せることもできるが、棚を自律的に牽引することも可能。配送センターや社内搬送を市場としている。
こちらはオーストリアのインキュベッドIT社のもの。容器を搭載してベルトコンベヤーまで運ぶといったことにも利用される。
ピザ配達など、屋外の自律搬送をしようという会社がアメリカやオーストラリアなどでいくつか見られるようになってきたが、下のスターシップ社の製品もそれを目指している。住宅地にあるスーパーマーケットから配達をするといったような、30分くらいの距離の搬送を考えているようだ。同社は、スカイプの共同創業者らが創設したスタートアップ。デザインもいい。
運ぶ以外の目的で自律走行するロボットも。
下は、業務用掃除ロボットで、スイスのクリーンフィックス社製。床をゴシゴシと磨いて乾かすらしい。サイズは大きいが、丸くて愛らしいかたち。
ロボット開発の興味深いビジネス・モデルを持つブルー・オーシャン・ロボティクス社で共同開発されたのは、病院の殺菌ロボット。ブルー・オーシャンについては、改めて記事にして詳しくお伝えしたい。
アメリカに比べて、介護関連のロボットも多く展示されていた。
下は、ロボット・ケア・システムズ社が開発中の歩行補助ロボット「レア」のプロトタイプ。スクリーン部分にユーザーのためのプログラムが表示される。障害物回避機能もある。かかる重さによって歩行のスピードを変えたり、エキササイズ・モードではダンスを誘導したりもするらしい。自立した生活を望む高齢者のためのテクノロジーを目指しているとのこと。
いやはや驚いたのはこちら。メルビン社のロボットは、トイレでズボンの着脱を助けてくれる。実際、トイレ回りのテクノロジーは大きな市場かも。
展示会場では、ユニバーサル・ロボッツ社製のアームがたくさん使われているのが目に入ってきた。地元ロボット会社として、同社がすでにエコ・システムを作っているのがよくわかる。
下は、同社アームを利用したリハビリ・ロボットの例。ジーランド・ケア社が開発。
まだプロトタイプのようだが、ベッド脇に設置できるよううまく考えられている。全体はこんなかたちだ。
オランダのデルフト工科大学の学生たちが組織しているプロジェクト・マーチは、対麻痺患者のためのエクソスケルトンを開発。10月にチューリッヒで開催される身体障害アスリートの大会、サイバスロンに出場する予定だ。
趣向を変えて、こちらは「プレシジョン(精密)・クッキング」とでも言うべきZトーブ社の料理の道具。バーナーと鍋にセンサーが搭載され、タブレットの指示に従って正確に料理をすることで、間違いなくおいしい一皿ができる、らしい。料理は、あの手この手でロボット関係者が狙っている分野だ。
3Dプリンティングはここにも。マテリアライズ社は、プロトタイプを迅速に作って、ニッチな市場を目指すロボット関係者に役立ちたいとのこと。ソフトなグリッパーもいろいろ。
実に不思議な素材はこれ。フランスのフォガーレ・ナノテク社は、高精度三次元計測(high accuracy dimensional metrology)技術を開発し、触れずしてタッチの感覚が生み出せるようなしくみを作っている。
このシステムでロボット・アームをくるむと、ぶつかる前に避けたりする。また、スクリーンの回りに貼付け、画面の中の3次元物体を触れずして操作するといったことが可能になる。
展示はまだまだあった。続きは後編に。