店員ゼロで運営する店。「ビーム・ショップ」訪問

テレプレゼンス・ロボットを開発するスータブル・テクノロジーズ社が、シリコンバレーの中心地であるパロアルトに店を開いたことは以前お伝えした

新しいタイプのロボット・ショップができたのは嬉しいことだし、しかも生の店員なしにショップを運営するというのだから、興味深い。

そのビーム・ショップを見に行った。

Robot - beam.1

パロアルトと言えば、シリコンバレーの中心地でスタンフォード大学のお膝元。地価がもっとも高い地域だが、ビーム・ショップがあるのは、その中央通りにあたるユニバーシティー通りだ。回りにはしゃれたカフェやレストラン、インテリア・ショップが並ぶ。その中で、テレプレゼンス・ロボット・ショップは異色の存在だ。

うわさに聞いた通り、店先の歩道にビームが出ていた。生身の人間ならば「客引き」ということになるだろうが、この店ではこうでもしない限り、何を売っている店なのか誰にもわからない。

店先のビームは、通る人に誰からなしに「ハーイ」と声をかけている。ロボニュースも、そんなビームの後をついて店内に入った。

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中は、ガランとした広い空間。奥にソファ・セットが置かれている他は、ビームがあるだけだ。ビームは、家庭用のビーム・プラスと職場用ビーム・プロが合計10台ほどあっただろうか。

案内してくれた遠隔店員は、ニューヨークからログインしていると教えてくれた。もちろん店内は熟知している様子で、「どこかにいるビームを操縦したい」と希望を伝えたら、すぐに操作コンピュータのあるところまで案内してくれた。

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操作は実に簡単で、キーボードの矢印を使う。左右前後のほかに、矢印2つを同時に押して斜め方向へ移動させることもできる。

画面は2つに分割され、ひとつは前方、もうひとつは足元をモニターできるようになっている。段差や階段、障害物を避けるためだろうが、この下方向への注意力を働かせ続けるのはちょっと難しい。どうしても前方に気を奪われるからだ。

動かしているビームは、これまた別の場所にあるものらしい。ガラス越しにオフィスのような空間が見えるが、ビームがいる部屋自体は閉じられていて、それほど広くない。中に人型の看板のようなものがあって、人間がどんな風に見えるのかも想像できるようになっている。

工夫によっては、ビームにいろいろな仕事をさせることも可能だと思った。たとえば、キャンディー・マシーンが頭上に取り付けられたビームがいた。どこかの店先で、キャンディーを振る舞ってくれるテレプレゼンス・ロボットがいると面白いだろう。

また、足元に送風機を取り付けたビームもいた。よく庭師が枯れ葉をまとめるのに使うような道具である。ビームを動かして地面を掃除するのも、決して不可能ではないと思わせる。

左端がビーム・プラス。右2台がビーム・プロ

左端がビーム・プラス。右2台がビーム・プロ

そのほかにも、トレイを取り付けてカナッペを載せ、パーティー会場内を回るというのもありだろう。「おひとついかがですか」などと勧めてくれたら、そこから会話が弾むかもしれない。

そういう意味では、自走型でなく操縦型のテレプレゼンス・ロボットには、それなりの用途があるのだ。

この店には、本当に生の店員がいない。ロボニュースが1台のビームに導かれて店内に入ると、間もなくして他のビームが路上へ出て行った。いつも、誰かが外で客引きをする。そういう就業規則になっているのだろう。

質問したところ、ビームを盗もうとした人はこれまでいなかったとのこと。店内にはたくさんカメラが取り付けられているようで、誰もそんなことをしようとは思わないらしい。

また、店の戸締まりもウェブ経由で可能になっているという。これには感心した。

テレプレゼンス・ロボットだけで店番

テレプレゼンス・ロボットだけで店番

こんなことができるのならば、遠隔店員がいるだけの店舗がほかにも可能なのではないかと思う。

たとえば、旅行代理店など。人間の店員はいても、業務自体がコンピュータで行われるということであれば、接客をテレプレゼンス・ロボットに任せて、どこか遠くの事務所から複数の支店を運営するということもできるだろう。

そんなことになると、実に素っ気ない世の中になってしまうだろうが、効率化を図っていけばそんな未来もあるのだろうと、ビーム・ショップを訪れて思った。

スータブル・テクノロジーズ社は、近くサンフランシスコにもう1店ビーム・ショップをオープンする予定だそう。

帰る時に後ろを振り返ると、また1人テレプレゼンス・ロボットに熱心に話しかけている人がいた

帰る時に後ろを振り返ると、また1人テレプレゼンス・ロボットに熱心に話しかけている人がいた

 

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