DARPAロボティクス・チャレンジのアトラスが、すっかりイメージ・チェンジ
今年6月に決勝を控えたDARPA(国防総省先端研究計画局)ロボティクス・チャレンジ(DRC)。それに先立って、DARPAが支給するアトラスを利用して競技に臨むトラックBチームのために、そのアトラスがアップグレードされた。DRCのリリースが伝えている。また、『IEEEスペクトラム』も同ニュースを報じている。
トラックBチームは、昨年11月にそれまでのアトラスをボストン・ダイナミックス社に送り返すように指示されたという。改造するためという理由だった。
だが、写真やビデオを見ると、新しいアトラス (別名:Atlas Unplugged)はすっかりイメージ・チェンジして、まったくの別人(?)のようである。リリースによると、古いアトラスの部品を使ったのは25%のみ、残り75%は新しい部品で構成されているとのことだ。古いのは、脚の下部と足部分のみ。
新しく使われた素材は軽量で、それによってバッテリー・システムとポンプを搭載しても総重量は旧アトラスよりやや重いだけに抑えられたとのことだ。最終的に新アトラスの高さは6フィート2インチ(188センチ)、重さは345ポンド(156.5キロ)。
新アトラスは、条件がより厳しくなる決勝戦に合わせたものだ。
決勝戦では、電源につながるテザリングはなし、またロボットの転倒を防ぐため防止装置や通信用のコードもつないではならない。万が一転倒した場合も人間が物理的に介入してはならず、ロボットが起き上がれない場合は競技参加もそれまで、という厳しいものだ。要は、ロボットは災害地で求められるのと同じように自律性を試されるわけだ。
新アトラスの特徴は以下である:
・3.7キロワット時のリチウムイオン・バッテリーと可変圧ポンプを搭載。1時間のタスクをカバーする。タスクの内容によって、出力をうまく調整することも挑戦。
・アームの付根が下がったことにより前方のアーム作業空間が拡大し、同時にロボット・ハンドの動きがよく把握できるようになった。追加のセンサーによって、そのフィードバックがオペレーターに送られる。
・電動となったアームの下半分は強度、デクステリティー、力計測機能が向上。
・手首部分の自由度がひとつ追加され、ドアノブを回転するなどのタスクがやりやすくなる。
・3台の認知コンピュータを搭載し、認知とタスク計画に役立つ。頭部には、ワイヤレス・ルーターを設置。
・ヒップ、背中、膝部分のアクチュエーターのサイズを変更し、ロボットの強度を増した。
・ワイヤレスの緊急停止機能を統合。
・新型ポンプによって、音が静かに。
チームには、1月末に新アトラスが供給されるとのこと。トラックBチームは、予選参加時も6ヶ月でアトラスにソフトウェアを統合して訓練したが、今回も4ヶ月あまりで新アトラス用にソフトウェア、制御インターフェイス、そして戦略を再調整しなければならない。
決勝戦のタスクの詳細はまだ未発表。だが、予選では8つのタスクにそれぞれ30分をかけられたが、決勝戦ではタスクは一連の作業としてつながっており、それを1時間以内に完了することが求められる。また、タスクのひとつは現場にいくまでわからない「サプライズ」になる模様。断続的に通信が遮断されて、ロボットが自律的に動作しなければならないのは予選時と同じだが、その頻度も多くなるようだ。
DRCプログラム・マネージャーのギル・プラット氏は「DRCの参加チームを観察してきた結果、前回に比べてより高いレベルでのパフォーマンスが可能になっていることがわかった。チームがどこまでテクノロジーを先へ進められるかが楽しみだ」と語っている。
上のビデオは、1月にトラックBチームを対象にして行われた説明会で撮影されたもののようだ。プラット氏はその中で、「望まれるところへテクノロジーを推し進めるためには、これだけの難しい条件設定が必要」とも述べている。
DARPAによると、決勝戦に参加するのは20チーム前後。予選で勝ち抜いたのは11チーム(そのうちアトラスを利用するトラックBチームは7)なので、9チーム程度が新しく加わるということになる。つまり、9つの新しいロボットが見られるということだ。
日本、EU、韓国からは、各政府からの補助金を受けてチームが参加することになっている。2月2日に参加登録が締め切られるので、間もなくその顔ぶれが明らかになるだろう。ロボニュースが耳にしたところでは、日本からはアカデミアを中心に3チームが参加する予定らしい。
また、今回の新アトラスのアップグレードには、ボストン・ダイナミクスと同じくグーグル傘下となった日本のシャフト社の技術や知恵も盛り込まれているものと考えられる。シャフト社は、予選で他を圧倒して第1位を獲得したチーム(決勝戦には参加しない)。
決勝戦に挑戦するチームには、ぜひこのアトラスの上をいく力量で頑張ってもらいたい。