アンバウンデッド・ロボティクスの閉鎖、ダン・キャラ氏の見方

ロボット業界の動向に詳しく、現在調査会社ABIリサーチのロボット部門実務ディレクターであるダン・キャラ氏が、ブログでアンバウンデッド・ロボティクス社閉鎖に関する考察を書いている

それによると、同氏も、会社を創設して製品まで発表しているのに、それに先立って資金を調達できないという条件があったというのは腑に落ちないとしている。他に何らかの理由があるのだろうということだ。

その上で、いくつかの説を挙げている。

アンバウンデッド・ロボティクス社のUBR-1

アンバウンデッド・ロボティクス社のUBR-1

ひとつは、強欲なベンチャー・キャピタルから資金を集められなかったという可能性。アンバウンデッド・ロボティクス社が研究コミュニティーをターゲット市場としていたのが、十分なリターンを約束しないと見られたのではないかということだ。

しかし、アンバウンデッド社は他の産業市場も確かにターゲットにしており、ベンチャー・キャピタルもまったくの無知ではなかったろうと言う。そして、時間が経てばそこに浸透していったはずだ。そこで、考えるべきポイントは、モバイル・マニピュレーターという、現在注目すべきロボットの位置だという。

同氏は、ロボットのモビリティーとナビゲーション、そしてマニピュレーションなどの問題には、現在解決策が見え始めたという。そこで、それらを合体したモバイル・マピュレーションの分野が、ロボティクスにとってのホーリー・グレイル(聖杯)、つまり大きな成功を収める技術になると見ている。ところが、実際にはここで開発を行っている企業は少ない。アンバウンデッド社は、そうした数少ない企業のひとつだった。

そうした視点から考えると、アンバウンデッド・ロボティクス社のUBR-1に含まれるような技術が他のシステムに見られない時ならば問題はなかったが、「たとえばスータブル・テクノロジーズ社のビーム」、そしてサヴィオーク社のサヴィワンのような既存、あるいは開発中のプラットフォームに自律的なモバイル・マニピュレーション機能が統合されるということになれば、競合状態が発生する。ことにスータブル・テクノロジーズ社のCEOであるスコット・ハッサンは、ウィロー・ガレージの創設者。そう考えると、「ウィロー・ガレージからのスピンオフ契約の制限によって資金調達ができない」という閉鎖の理由の意味が通るという。キャラ氏は、実際の契約内容は知らない上で、と断ってはいる。

興味深いのは、ある時点まではこの利害相反は起こっていなかったのだろう、とキャラ氏が見ていること。つまり、もしこの見方が本当だとすれば、途中からスータブル・テクノロジーズ社がモバイル・マニピュレーションに関心を抱き始めたということになる。

また、『ザ・ロボット・レポート』は、もしスピンオフ契約の中に、株希薄化を回避するとか過剰に厳しいロイヤリティー条件があった場合は、たいてい両者間のネゴシエーションによって解決されるもの、と述べている。このネゴシエーションが今回は起こらなかったということは、企業としてアンバウンデッド・ロボティクス社を維持し続けることが選択されなかったということになる。

ロボニュースが耳にしたところでは、UBR-1を購入したいと名乗り出ていた企業や研究機関はすでにいくつかあり、販売代理店の契約交渉も始まっていた。そこまで進んでいて、突然中断されることになったということだ。

キャラ氏は、アンバウンデッド・ロボティクス社の4人の創業者たちが、ローコストでモバイル・マニピュレーション機能を持つロボットの開発を成し遂げたことを評価し、彼らがスピンオフ契約の縛りがないところで、新たにロボット開発に挑むのではないかと見ているようだ。

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