「ロボットは仕事を奪う」議論に突破口を
ロボットと仕事、製造業とアウトソースの議論は、内容が実に錯綜している。ロボットはやっぱり人々の仕事を奪うのか。ロボットによって製造業はアメリカに戻ってくるのか。
だが必要なのは、ありきたりの論調に陥らないことかもしれない。
まず、ロボットが奪うとされる仕事のリストを挙げてみよう。本来は延々と続く。あまりに多いので怖くなるほどだ。
・小売店員
・配達員、配送ドライバー
・カスタマー・サービス担当者
・兵士
・薬剤師
・医師の書記
・弁護士のアシスタント(パラリーガル)
・調理済みファストフードを暖める人
・在庫補填員
・農機具のオペレーター
・ラボ内の単純作業
・工場作業員
・銀行窓口
・レセプショニスト
・旅行代理店
・新聞記者
・テレマーケター
・電話オペレーター
単純作業ならばともかく、この中には一見知的に見える新聞記者なども含まれている。これは、ロボット・ジャーナリズムによって、データや出来事が組み合わされ、テキストが生成されて伝えられるようになるからだ。わざわざ人間が出かけて取材しなくても済む。もし、まだ書き手として生き残ろうとするのなら、ロボットが考えつかないような物語を生み出すことが必要になるという。
オックスフォード大学の予想によると、オートメーションによって2033年までに現在の仕事の47 %はなくなっているらしい。また、今後20年以内にアメリカの仕事の半分が自動化されるという予測もある。
ところが、それと反対に見えるような意見もある。
『ポリティコ・マガジン』が伝えるところによると、ロボット技術の開発で知られるピッツバーグは、テクノロジーと教育分野に80%の高額所得者が雇用されていて、これがピッツバーグの経済安定剤として働いているという。
ピッツバーグは、先端的なテクノロジーのおかげで、ポスト産業時代から現代的なテクノロジーのイノベーション時代への脱皮を図った。テクノロジーを全面的に受け入れたからこそ経済が促進され、これは時代に取り残されたデトロイトとは一線を画している。
また『ワイアード』にケヴィン・ケリー氏が書いた記事も興味深い。同氏は、現在の仕事、未来の仕事、人間の仕事、ロボットの仕事を下のように整理している。
ロボットに仕事を奪われると嘆いているのは、A(現在の仕事で、いずれロボットが取って代わる)の部分。そして、D(未来の仕事で、最初は人間がやる)も同じ運命をたどる仕事だ。
だが、面白いのはD(今は想像もつかないロボットの仕事)の部分だという。ロボットが想像を超えるような仕事をするようになった時に、人間はまったく今とは異なる仕事を見つけているというのだ。だから、ロボットに対決するのではなく、ロボットと「共に」仕事をするようになるのだと考えるべき、とケリー氏は述べている。
「ロボットに仕事を奪わせればいい。そして人間がもっと意味のある新しい仕事を想像できるように手助けさせよう」
『ロボット・レポート』が紹介していたのは、『マノリス』が掲載している未来志向の仕事。冗談とも本気ともつかないものの、なるほどと言いたくなるものもある。未来型の仕事とは、以下だ:
・都市農家(高度なテクノロジーを利用した農業が必要)
・オルターナティブ・リアリティーを作るアーキテクト(グーグルグラスなどで、みなが代替現実を生きるようになるので、それを作る人が必要)
・パーソナリティー・プログラマー(シリの声だけでは退屈になるので、いろいろなパーソナリティーが欲しくなる)
・天気コーディネーター(いずれ天候を調整できるようになる)
・記憶マニピュレーター(ディズニーランドへ出かけずして、素晴らしい記憶が手に入る)
いずれにしても「ロボットが職を奪う」という議論は、その枠組みの捉え方によってかなり希望が出てくるものにもなるのだ。