ハードウェア・インキュベーターとはどんな空間? ハイウェイ1を訪問
サンフランシスコには、すでにハードウェア・インキュベーターやアクセラレーターがいくつかできている。これまであったインターネット・サービスやアプリ開発をサポートするソフトウェア・アクセラレーターの方法論が、ハードウェアにも広がってきたのだ。
だが、ハードウェアのサポートの中味は、ソフトウェアとは異なったものだ。ハードウェア・アクセラレーターとはどんな場所なのか。それをレポートしよう。
ハイウェイ1(ワン)は、中国で製造、パッケージング、発送などを請け負うアイルランドの企業、PCHインターナショナルの子会社で、ウェアラブル・デバイスなどハードウェア・スタートアップのインキュベーションを行っている。
ハイウェイ1の出口を抜けると、目の前に広がるのは天井の高い大部屋である。そこに机が20ほども並んでいる。これが起業家たちが仕事をする空間だ。
ハイウェイ1の副社長ブレイディー・フォーレスト氏によると、同社が受け入れるのは社員が2〜3人のスタートアップだ。すでにプロトタイプがあり、社員もハードウェアの分かる人間、プログラマー、ビジネス担当と揃っているのが望ましい。
現在ここで仕事をしている11社は、100以上の中から選ばれた。ウェアラブル、自動車用のヘッドアップ・ディスプレイ、ソーラー関連と内容はいろいろだ。スタートアップは4ヶ月をここで過ごし、レクチャーや指導を受けながら、プロトタイプを製造に乗せるまでの重要な作業を行う。
ハイウェイ1には、4人のエンジニア社員がいる。それぞれに製造体験があり、彼らがスタートアップに直接関わってノウハウを伝授する。
ハイウェイ1にはレクチャー室もあり、まるで学校のクラスルームのように講義が受けられるようになっている。また、プロトタイプを作るための機械、道具なども揃っており、起業家は効率的に作業が進められるようになっている。他の起業家たちとの様子も参考にしながら、もっとも難しい期間を経験ある人々と恵まれた環境の中で過ごすことができるわけだ。
ここにいる間に、ベンチャー・キャピタル会社や関係者を集めたデモ・デーも開かれる。スタートアップは、製品やビジネスモデルをプレゼンテーションし、資金を募ったりネットワークを広げたりするのに役立てることができる。1月末に開かれたデモ・デーには、200人に近い人々が集まり、スタートアップの製品を手に取って見ていた。
ハイウェイ1でインキュベーションを受けると、3〜6%の株と交換に2万ドルのシード投資を受ける。4ヶ月の間に超速で開発を進め、次のステップに進めるようハイウェイ1がまわりを固めてくれるわけだが、そこにはかつてガレージで孤独にモノ作りをしていたシリコンバレーの発明家の姿はない。彼らは、もっと現代化された方法論に則って、アイデアと製品を試す新しいタイプのハードウェア・スタートアップだ。
それでも、フォレスト氏は「ハードウェアは長い時間がかかるプロセス」だという。何度もやり直しを経ることもよくあり、またソフトウェアのスタートアップならばすぐに製品やサービスをスタートできるのに比べて、実際の製品発表はデモを行った後、平均で6〜9ヶ月先のことになる。
ベンチャー・キャピタル会社はハードウェアへどんどん足を踏み入れてはいるが、製造、出荷、在庫を抱える資金など、彼らにとってもわかりにくいことが多いという。
製造サービスを行うPCHインターナショナルがハイウェイ1のようなインキュベーターを擁しているのは、ひとつにはハードウェアをアクセスしやすいものにしたいことがある。「ハードウェアがソフトウェアと同じくらい、簡単に開発できるようになることが究極の目標」と、フォレスト氏は言う。
もうひとつは、PCHインターナショナルの潜在的な顧客をこのインキュベーションから生むことだ。PCHインターナショナルには独自のアクセラレーターもあり、インキュベーターを卒業したスタートアップがサポートを受けることも可能だ。
ハイウェイ1には、まだスティルス・モードだがロボットのスタートアップも1社混じっている。こうした環境から、新しいタイプのロボット会社が頼もしいサポートを受けて生まれつつある。