ロボティクス・チャレンジのバーチャル版、勝者チーム決定!
DARPA(国防総省高等研究開発局)が主催するロボティクス・チャレンジ(DRC)は、ロボット界の一大イベントである。これは、災害時の救援を前提としたタスクをロボットに競わせるもので、2014年末のファイナル戦まで段階的に試合が続く。
そのうちのバーチャル・ロボティクス・チャレンジ(VRC)部門の選抜が先日行われ、勝者チームが決定した。
そもそも全体のDRCは4部門に分かれている。トラックAは独自のロボットとソフトウェアを開発するチームからなり、すでに180万ドルの補助金を受ける7チームが参加。今年6月の設計審査(CDR)で5チームがさらなる補助金を受ける。
トラックBとCは、コントロール・ソフトウェアを開発し、そのうちトラックB(11チーム)はこれまでも補助金を受けてきたチーム、一方トラックC(15チーム)は独自資金で開発を行ってきた。今回のVRCは、この2つのトラックに参加するチーム間の試合で、高得点を取った6チームにはそれぞれ75万ドルの補助金とボストン・ダイナミクス社が開発したロボット、アトラスが与えられる。チームはこれで今年末に開かれるトライアル戦でトラックAのチームと競うことになる。
トラックDはAと同様、ロボットおよびソフトウェアを開発するが、すべて独自資金で臨み、トライアル戦を経てファイナル戦にチャレンジする。チーム数は不明。
今回のVRCで勝者となったのは、上位から以下。スコアーカードはここに:
・WPI Robotics Engineering C Squad(ワーセスター工科大学)
・マサチューセッツ工科大学(MIT)
・JPL(NASAジェット推進研究所)/カリフォルニア大学サンタバーバラ校/カリフォルニア工科大学
・TORC(TORC/ダームシュタット工科大学/バージニア工科大学)
・Team K(日本)
・TROOPER(ロッキード・マーティン)
・ケース・ウェスタン大学
6チームではなく9チームあるが、これはトラックAで補助金を受けているJPLがふたつの開発を合体することを決定し、今回受ける補助金を他のチームに分配したため。TROOPERはその補助金と共にアトラスを譲り受けた。Team Kとケース・ウェスタン大学は合併して補助金を受けるが、さらに香港大学が同合併チームにアトラスを寄付したという。チームの名前も香港大学の略号と同じHKUとなるようだ。これによって、優れたチームに広くチャレンジの機会が与えられることになる。
VRCでは、DARPA が提供するシミュレーション環境(OSRF開発)の中でバーチャル・ロボットが車に乗って運転し、デコボコの地面を歩き、ホースを栓に装着してバルブを回すという3種のタスクを行った。そこでの動き、センサー認知、スピードなどが競われたわけだ。
全部で8カ国から26チームが、インターネット経由で参加。1タスクについて5回のシミュレーションが行われたが、現実の災害状況を模して、通信環境にはさまざまな制約が加えられたらしい。
オープンソースのDARPAのシミュレーターが公開されたのも初めてのことで、これは今後のロボット開発に大きな意味を持つもの。
実際にロボットが用いられるDRCの2013年末トライアル戦、2014年末ファイナル戦では、さらにドアを開けて建物内に入り、はしごを上って連絡通路を渡り、道具を使ってコンクリートの壁を破り、漏れを起こしているパイプを探しあててバルブを閉め、冷却ポンプなどの部品を付け替えるといった作業が加わり、全部で8種のタスクで競われる。
トライアル戦では8チームが選ばれて、それぞれに100万ドルの補助金が出される。ファイナル戦の優勝チームには200万ドルの賞金が与えられる予定だ。
ところで、今回参加したTeam Kは日本のチームだが、DARPAのサイトにも詳細が出ておらず、誰が加わっているのかが不明。わかり次第続報をお伝えしたい。またトラックAには東京大学JSKラボラトリーからスピンアウトしたシャフト社が参加している。チャレンジが楽しみである。
そもそもDRCが設けられたのは、福島第一原発事故がきっかけになっている。一連の複雑なタスクを、ロボットたちがいかにこなすか。人間の生活を支えるロボットがここから生まれてくる。