ヒッチボット、アメリカで襲われる。

カテゴリー: ニュースロボット研究

人々の助けを借りて旅をするロボット、ヒッチボットについては以前お伝えしたことがある。「人はロボットに手を貸すか」という社会実験を担って、一人旅立ったロボットのことである。そのヒッチボットがアメリカで破壊されてしまった。

道ばたに打ち捨てられていたヒッチボット(http://www.philly.com/より)

道ばたに打ち捨てられていたヒッチボット(http://www.philly.com/より)

歩くこともできないが、ちょっとした会話ならばOK。道ばたに座って通りかかる車を待ち、ヒッチハイクして目的地まで向かう。人の好意によって旅を続けるロボットである。昨年、カナダで最初に大陸横断を果たし、その次はドイツやオランダに行ってみんなに親切にされた。

ところが、アメリカの旅を始めて2週間ほどたった今月1日、フィラデルフィアで心ない誰かに襲われて破壊されてしまった。旅はこれで終わりとなった。

地元紙の『フィリー・ドットコム』が伝えるところによると、最後にヒッチボットに会った2人連れの男性は、数時間連れ回した後、町のベンチにヒッチボットを座らせて去った。その後、同じ彼らが監視カメラの記録というビデオを公開したのだが、そこにはベンチに向かって蹴りを入れている男性の姿が写っているのである。2人の男性は、ヒッチボットが破壊されたと聞いて、何か監視ビデオがないか探してくると予告していた。

左下は、最後にヒッチボットが目撃された風景。ビデオは、男性が何かを踏みつけたり、ヒッチボットのアームに見えるようなものを投げているところが写っている。(http://www.philly.com/より)

左下は、最後にヒッチボットが目撃された風景。ビデオは、男性が何かを踏みつけたり、ヒッチボットのアームに見えるようなものを投げているところが写っている。(http://www.philly.com/より)

破壊されたとなって、アメリカのメディアがにわかにヒッチボットのことを伝え始めたのもおかしなことである。旅自体についてはそれほど話題にはなっていなかったからだ。「殺された」「首をはねられた」「解体された」と、その表現も残酷である。

そんな惨事を見て、地元フィラデルフィアのギークたちが立ち上がっていた。「ここにもギークのコミュニティーがある。ヒッチボットをぜひ修理させて欲しい」と。

ところが、事態は今、さらに変な方向へ進みつつある。というのは、どうもその監視ビデオは作り物だというのだ。『ギズモード』は、ビデオの画質がわざわざ荒らされていること、男性が演技をしているように見えること、そもそもその位置に監視ビデオはない、といったことを理由に挙げている。監視ビデオを入手したとして、これを公開した2人の男性は、ビデオ・ブログ界ではちょっと名の知れたアクターらしい。(フル・ビデオはここから見られる)。

ただ、同記事は、ビデオは作り物だとしても、彼らが実際にヒッチボットを破壊したとは断定できないという。ビデオにはヒッチボットがちゃんと写っていない。また、これより先の時間に、首なしのヒッチボットを車の座席に座らせているツイートが目撃されていたらしい。ツイートはその後、削除されているという。

先の地元紙が伝えるところでは、ヒッチボットの生みの親であるカナダの研究者たちの元には、ロードアイランドの男性から連絡があり、「壊れたヒッチボットを発見した。今週そちらに送る」と知らされたという。

実際、ヒッチボットが今どこにいるのかは誰もわからないらしい。カナダの研究者らは、「いい子にしていたロボットにも、よくないことが起こるよね」とヒッチボットにツイートさせて、「肯定的なことに目を向けたい」と、一連の騒ぎには冷静に対処している。ヒッチボットは20分ごとに画像を送信していたというが、そこに何かが写っていたのかどうかも明らかにされていない。

だが、そうする間も、人間社会はどんどん動いている。先述したギークたちがキックスターター・キャンペーンをすでに開始した。修理代の寄付を募り、すでに5000ドル近い額が集まっている。また、「ロボットを100ドルで売ります」というクレッグズリストの投稿まで現れた。「中古ロボット。走行マイルはかなり高いが、笑顔(スマイル)はそのまま。バケツは壊れているものの、家にあるバケツで交換可能」などと書かれている。こちらは明らかに冗談だろうとのこと。

ヒッチボットは社会実験のために出かけた。だが、ヒッチボットが壊れた後の変さ加減こそ、ロボットが巻き起こした社会実験の賜物かもしれない。

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